売上が増えたのに、どうして利益が減るの?
ジム今月は売れた数が増えたのに、利益が小さくなったんだ。売上の報告だけなら順調に見えるから、会社の会議で何を説明すればいいか迷っている。値下げをしてお客様が増えたことと、会社に残る利益は、どうつなげて考えればいいのかな。

ユイ今日は一つの架空の会社を使って、私が電卓で確かめるね。実在企業の成績でも、業界平均でも、将来予測でもない練習用の数字にする。読者が自社の帳簿へ置き換えるときには、同じ期間と同じ金額の基準にそろえることも確認したいな。
センパイその姿勢が大事だ。売上が伸びたという事実だけでは、利益が増えたとは判断できない。日本政策金融公庫などの公開資料で費用の分け方と計算の骨組みを確認し、ここからの比較は私たちが設定した仮定に基づいて進めよう。特定企業の値決めを指示する話ではないよ。
まず、計算の範囲を紙に書こう
ジム会社の数字といっても、売上総利益や営業利益、最終利益などがあるよね。どれを使っているのか曖昧だと、担当者が同じ表を見ていても、頭の中では違う計算をしてしまいそうだ。今日はどの範囲まで含めることにするのかな。

ユイ基準の販売価格は一個一万円、一個売るごとの変動費は六千円、販売数は月百個、固定費は月三十万円と書いたよ。販売数にかかわらず、この範囲では価格と一個あたり変動費が変わらず、固定費も一定とする。実際の見積書や契約から得た数字ではないことも表に添えるね。
センパイいいね。実務では税込みと税抜きが混ざったり、月の売上に年額の費用をそのまま置いたりすると、式が正しくても結果がずれる。まず期間、対象事業、利益の範囲、単位、税の扱いを見える場所に書こう。計算を始める前のこの一行が、あとから数字を点検する手がかりになる。
| 項目 | 仮定・計算結果 |
|---|---|
| 価格/一個 | 10,000円 |
| 変動費/一個 | 6,000円 |
| 月間販売数 | 100個 |
| 月間固定費 | 300,000円 |
| 限界利益/一個 | 4,000円 |
| 月間営業上の利益 | 100,000円 |
すべて架空の学習例。税抜き、単一商品、営業外損益・法人税等・元金返済を除外。価格と一個あたり変動費、固定費は各ケースの範囲で一定。実際の企業の実績や需要予測ではありません。
売るたびに増える費用を見つける
ジム一個六千円という変動費は、仕入代だけだと思っていたよ。ネットで売る会社なら販売手数料もあるし、梱包や配送でお金がかかることもある。仕入れの差額だけを利益と思うと、売れた後に発生する費用を見落としてしまいそうだね。
センパイ変動費は、ここでは販売量や売上に応じて増える費用だ。練習例の六千円は仕入れ、販売に伴う手数料、梱包などをまとめた仮の額と考えよう。ただし、手数料が売価の何%で決まる契約なら、値段を変えると一個あたりの変動費も変わる。後半でその違いも確かめるよ。
ユイ実際に表を作るなら、請求書と販売管理画面を見て、注文ごとの金額、売上に対する料率、月額の基本料を分けるのね。送料がいつも同じとは限らないから、配送地域や荷物の大きさが変わるときは別の条件にする。六千円という数字を全商品に一律に使うのは、この練習だけにするよ。
センパイその通り。科目の名前だけで決めず、契約と発生の仕方を確かめるんだ。一つの請求に基本料と従量料金が混ざっていることもある。今すぐ正確に分けられない部分は推定と記し、請求明細を得たら更新する。わからない金額を都合よくゼロにするより、不明として残す方が判断に使いやすい。
固定費は、永遠に変わらない費用ではない
ジム固定費という名前だから、一度決めたらずっと同じだと思っていた。でも売れる数が増えて事務所を広げたり、担当者を増やしたりすれば、毎月の費用も上がるよね。一定と置くのは、会社が今の規模で営業する範囲だけなんだね。
センパイそうだよ。固定費は、分析している期間と営業規模の範囲で、売上に直接比例せず発生する費用と考えよう。月額の賃借料などが例になる。人件費や光熱費をどちらに分類するかは、実際の働き方や契約、操業との関係で変わる。すべての会社で同じ分け方になるわけではない。
ユイ固定費三十万円の中身を確認する欄を作るね。今回のモデルでは、売上が増えても百二十五個までは三十万円のままと仮定する。でも、百十個を超えたところで人を増やすなら、その地点から固定費を増やした別の表が必要になる。表の端に対応できる販売数の範囲も書いておこう。
センパイよく気づいた。固定と変動の分類は、現実を整理するためのモデルだ。変わり方を無視して将来の売上まで一直線に延ばすと、利益を過大に見積もる。固定費が一定という前提には、必ず対象期間と営業規模を添える。過去の分類が、次の計画でも使えるかを確認することが大切だ。

一個売れると、いくら固定費をまかなえる?
ジム一万円で売って六千円かかるなら、差額は四千円。この四千円を一個の利益と呼んでしまっていたよ。でも固定費三十万円はまだ引いていないから、会社の最終的なもうけと同じではないんだね。まず別の名前を付ける必要がありそうだ。

ユイ逆算もしてみるね。売上高は一万円かける百個で百万円、変動費合計は六千円かける百個で六十万円。百万円引く六十万円引く三十万円は十万円。一個ずつ積み上げる方法でも、合計から引く方法でも同じ答えになった。単位も円と万円を混ぜずに確かめられたよ。
センパイそれが検算だ。限界利益は会計上の売上総利益と常に一致するわけではない。売上原価に固定的な費用が含まれたり、販管費に販売量に連動する費用が含まれたりするからね。決算書の粗利をそのまま使う前に、この分析で何を変動費として引いたのかを書いておくと、誤解を防げる。
限界利益率を、百分率と小数で確認する
ジム限界利益が四十万円で売上百万円なら、限界利益率は四〇%だね。計算式へ入れるとき四〇を入れるのか、〇・四を入れるのか、ときどき迷うんだ。表計算の表示が四〇%でも、中の数字は別の形になっていることがあるよね。

ユイ一個あたりでも四千円を一万円で割って〇・四になるね。計算表では、率のセルに〇・四を入れ、表示形式だけを%にしたよ。四〇を入力して四〇〇〇%と表示される間違いを避けられる。売上、限界利益、率の三つを並べれば、どこか一つだけ桁が違うと気づきやすくなるね。
センパイ率だけに注目しないことも大切だ。同じ四〇%でも、売上百万円なら限界利益四十万円、売上二百万円なら八十万円になる。固定費をまかなうのは割合ではなく金額だ。率で商品や期間を比べ、最後に合計金額で採算を確認する。この二つを行き来すると、話が数字から離れにくくなる。
損益分岐点は七十五個、売上七十五万円


ユイ七十五個のとき、売上七十五万円、変動費四十五万円、限界利益三十万円、固定費三十万円だからゼロだね。七十四個なら限界利益二十九万六千円で四千円の赤字。七十六個なら三十万四千円で四千円の黒字。この三点を確かめると、分岐点の意味が式だけよりよくわかったよ。
センパイ端数が出る場合も考えよう。計算結果が七十五・二個で、商品を一個単位でしか売れないなら、赤字を避ける数量は七十六個へ切り上げる。一方、売上高の計算結果は分析の目安として小数が出ることもある。数量を丸めた結果と金額を混同せず、売れる単位に合わせて検算するんだ。
| 販売数 | 売上高 | 変動費合計 | 固定費 | 利益 |
|---|---|---|---|---|
| 74個 | 740,000円 | 444,000円 | 300,000円 | −4,000円 |
| 75個 | 750,000円 | 450,000円 | 300,000円 | 0円 |
| 76個 | 760,000円 | 456,000円 | 300,000円 | 4,000円 |
基準の価格10,000円、変動費6,000円/個。固定費300,000円÷限界利益4,000円=75個。

値下げをして、販売数が二割増えたら?
ジムここから気になっていた値下げだ。一万円の商品を九千円にして、月百個から百二十個へ販売数が増えたとする。売上は百万円から百八万円へ増えるから、八万円よくなったと報告してしまいそうだ。でも変動費も百二十個分になるんだよね。

ユイ合計の計算でも、売上百八万円、変動費七十二万円、固定費三十万円で六万円になる。値下げ前は四千円だった一個あたり限界利益が三千円へ二五%減り、販売数二〇%増では埋め合わせられなかったのね。売上の増加率と限界利益の減少率を、そのまま足したり引いたりはできないんだ。
センパイそうだね。値下げ後は、増えた売上より、残った限界利益の合計を確かめる。今回は需要が二割増えると仮定しただけで、実際にその反応が起こるとは言っていない。お客様の反応と採算の計算を分けておくと、よい結果だけを選んで計画を作ることを避けやすくなるよ。
元の利益を保つには、何個必要なの?
ジム値下げ後に黒字ならよいという判断と、元の利益十万円を維持したいという判断は違うね。百二十個で六万円の利益なら、少なくとも赤字ではない。でも元の水準へ戻すには、あと何個必要かを確かめてから施策を考えたいな。

ユイ百三十三個だと限界利益三十九万九千円、利益九万九千円。百三十四個なら四十万二千円で利益十万二千円になる。百三十四個の売上は百二十万六千円だね。元の売上百万円へ一割を足す、といった計算ではなく、値下げ後の一個あたり限界利益から割り戻したよ。
センパイただし、その数量を売れるかは別の確認が必要だ。作業時間、配送能力、在庫、対応人数が足りるかを調べよう。追加費用が発生するなら、四十万円という必要限界利益も変わる。必要数量は達成の保証ではなく、計画と供給能力を照らし合わせるための条件だと位置付けるとよい。
赤字を避ける数量と、利益目標の数量を分ける


ユイ基準では百個売って分岐点まで二十五個の余地があり、値下げ後百二十個では二十個の余地ということね。ただし価格が違うので、単に個数だけで比較しないようにする。売上と費用の条件をそろえたケースごとに、ゼロになる地点と目標利益へ届く地点を二本の線で示したいな。
センパイいい整理だ。採算の境目、普段の実績、達成したい利益の三つを並べると、同じ黒字でも状態の違いを話しやすい。赤字回避だけを目標にすると、更新投資や予想外の費用に対応する余地を考えそびれることもある。必要な余裕は会社ごとに異なるから、一律の安全基準は置かないよ。
値上げをしたら、何個まで減っても同じ利益?
ジム反対に、一万円を一万一千円にして販売数が少し減るケースはどうかな。値上げをすると必ず利益が増えるわけではないだろうけれど、何個までなら元の十万円を保てるか計算できれば、価格の議論が具体的になりそうだ。

ユイ八十個なら売上八十八万円、変動費四十八万円、固定費三十万円で十万円。売上は元より十二万円少なくても、利益は同じになる。九十個売れたケースなら売上九十九万円、変動費五十四万円で利益十五万円だね。ここでも売上と利益の動きが同じ方向になるとは限らないのがよくわかるよ。
センパイだから値下げか値上げかを、計算だけで即決してはいけない。お客様が感じる価値、代替商品、契約、品質、継続購入への影響を確認する必要がある。価格を維持して内容や業務を改善する案もあるよ。計算表は選択肢ごとの条件を比べる道具で、需要や信頼を自動で測ってくれる道具ではないんだ。
| ケース | 単価 | 数量 | 売上 | 限界利益 | 利益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 価格維持 | 10,000円 | 100個 | 1,000,000円 | 400,000円 | 100,000円 |
| 値下げ | 9,000円 | 120個 | 1,080,000円 | 360,000円 | 60,000円 |
| 値上げ | 11,000円 | 90個 | 990,000円 | 450,000円 | 150,000円 |
数量は仮定で、価格変更への需要反応を予測したものではありません。一個あたり変動費6,000円、固定費300,000円は共通。
売上が一割下がると、利益は何割下がる?

センパイ九十個分の限界利益は四千円かける九十個で三十六万円だ。固定費三十万円を引くと利益六万円になる。売上は百万円から九十万円へ一〇%減る一方、利益は十万円から六万円へ四〇%減る。このモデルでは、固定費があるため売上の変化が利益に大きく表れるんだよ。
ユイ八十個なら売上八十万円、変動費四十八万円、利益二万円。七十個なら売上七十万円、変動費四十二万円で二万円の赤字になるね。比較表では数量七十、七十五、八十、九十、百の五ケースを並べ、利益がマイナスからプラスへ変わるところを示すと、境目も読み取れそうだ。
センパイそうしよう。ただし、利益の変化率は元の利益が小さいほど大きく出やすい。基準がゼロや赤字のときに、同じ百分率の説明を無理に当てはめない。金額と前提を併記し、どの状態からどの状態へ変わったのかを明らかにする。率の大きさだけで施策の良し悪しを決めるのは避けたいね。
| 数量 | 売上 | 利益 |
|---|---|---|
| 70個 | 700,000円 | −20,000円 |
| 75個 | 750,000円 | 0円 |
| 80個 | 800,000円 | 20,000円 |
| 90個 | 900,000円 | 60,000円 |
| 100個 | 1,000,000円 | 100,000円 |
価格10,000円、変動費6,000円/個、固定費300,000円が一定の場合。利益=4,000円×数量−300,000円。

追加の広告費を、売上だけで評価しない
ジム月五万円の広告を追加して売上が十万円増えたら、広告費より売上増加が大きいので成功と言えるかな。以前はそんな報告をしていたけれど、今の例なら増えた十万円にも変動費がかかる。計算し直す必要があるね。
センパイ基準の限界利益率四〇%で、他の条件が変わらなければ、売上十万円増による限界利益は四万円だ。追加広告費五万円を引くと、施策による利益の増減は一万円のマイナスになる。広告費をまかなうために必要な追加売上は、五万円を〇・四で割って十二万五千円だよ。
ユイ単価一万円なら十二・五個分だから、数量で考えると十三個以上必要ね。十三個増なら売上十三万円、限界利益五万二千円、広告費を引いて二千円のプラス。ここでは、その売上がすべて広告によって純粋に増えたと仮定していることも書くね。自然に来た注文まで広告の成果に含めないようにしたい。
センパイ大切な点だ。同時期の季節性や既存客の購入時期のずれも考える必要がある。比較できる期間を用意し、広告経由の初回購入とその後の継続を区別しよう。効果が不確かなうちは、将来の購入を確定利益として足さない。短期採算と長期の検証課題を分けて報告すると、次の判断をしやすくなるよ。
忙しくなって、人や設備を増やすとき
ジム値下げで百二十個売れるようになったら、対応するため月五万円の追加人員が必要だった、というケースもありそうだね。最初の計算では固定費が三十万円のままだったから、そこが崩れると利益六万円という答えも変わるんだね。
センパイその条件では固定費が三十五万円になる。一個三千円の限界利益が百二十個で三十六万円だから、利益は一万円だ。元の十万円を維持するには必要限界利益四十五万円を三千円で割り、百五十個が必要になる。値下げだけでなく対応費用も含めて、もう一度計算するんだ。
ユイ値下げなし百個は利益十万円、値下げして百二十個で追加人員なしは六万円、追加人員ありなら一万円。売上百八万円という同じ数字でも、費用条件で結果が違うのね。人を増やすことで品質や納期が改善する可能性はあるけれど、その価値も数字と実際の運営を合わせて確かめたいな。
センパイ人員を減らせばよいという結論にも飛ばないようにしよう。安全、品質、労務管理、継続できる働き方には、必要な費用がある。ここで問うのは、その体制を維持できる価格と販売量かどうかだ。売上の上限まで考え、忙しいのに利益が残らない状態なら、受注条件や商品構成も含めて検討するんだ。
価格は基準10,000円、値下げ9,000円。変動費6,000円/個。固定費は基準と値下げで300,000円、追加人員ありは350,000円。数量と費用は仮定。
手数料が売価に連動する場合を計算する
ジム最初の六千円を一定にする仮定には、限界があるという話だったね。たとえば販売手数料が売価の一〇%なら、値下げすると手数料も下がる。そのときは一個あたり変動費を六千円のままにしてはいけないんだね。
センパイ別の例として、仕入れや梱包などの一定額を一個五千円、販売手数料を売価の一〇%としよう。売価一万円なら変動費は六千円で、基準と同じ四千円の限界利益になる。九千円へ下げると手数料九百円、変動費五千九百円、限界利益三千百円になるんだ。
ユイ九千円で百二十個なら、売上百八万円、変動費七十万八千円、限界利益三十七万二千円。固定費三十万円を引くと利益七万二千円になるね。一定六千円の例では六万円だったから、一万二千円違う。どちらも式は正しくても、契約の前提が違うため答えが変わったんだ。
センパイ一〇%という料率はこの練習の仮定で、特定サービスの実際の料金ではないよ。実務では料率の対象が商品代だけか送料込みか、最低手数料や決済の基本料があるかも確認しよう。値段を変えるたびに動く費用と、動かない費用を分けると、価格変更後の見積もりを更新しやすくなる。
複数の商品がある会社は、売れ方の比率も見る
ジム実際には一つの商品だけを売る会社は少ないよね。高い限界利益の商品と低い限界利益の商品が混ざったら、会社全体の平均を使えばいいのかな。売上が同じなのに、売れ筋が変わって利益が違うことも説明できそうだね。
センパイまず商品ごとの売上と変動費を集め、合計売上から合計変動費を引こう。その合計限界利益を合計売上で割れば、全体の限界利益率になる。商品ごとの率を単純に足して商品数で割ると、売上規模の違いを無視する場合がある。実際に売れた構成を反映して計算することが必要だ。
ユイ仮にA商品の売上六十万円、変動費三十万円なら限界利益三十万円。B商品の売上四十万円、変動費三十万円なら限界利益十万円。合計売上百万円、限界利益四十万円で四〇%になる。Aの率五〇%とBの二五%を単純平均した三七・五%とは違うことを、電卓で確認できたよ。
センパイさらに、AとBの売上が入れ替わり、率が同じなら限界利益は二十万円と十五万円で合計三十五万円になる。固定費三十万円なら利益五万円だ。会社の売上合計が百万円のままでも、商品構成だけで利益が変わる。全体の分岐点を将来へ使うときは、売れ方の比率が変わらない仮定にも注意しよう。
利益率と、使える時間を一緒に見よう
ジムそれなら限界利益率の高い商品だけを増やせばよいのかな。でも同じ一個でも対応時間が違うし、お客様がまとめて買う商品もある。率が低いからすぐ廃止するという判断にも、何か見落としがありそうだね。
センパイ率に加えて、一件の限界利益の金額、必要な作業時間、設備の占有、他の商品への影響を調べよう。時間が制約になっているなら、制約となる工程一時間あたりの限界利益も一つの比較材料になる。ただし需要、品質、納期、継続取引などを合わせて見なければ、数値だけで結論は出せない。
ユイ練習では一件四千円を得る商品Cに一時間、一件三千円の商品Dに三十分かかるとするね。単純計算だと一時間あたりCは四千円、Dは六千円。でもDが二件売れることや、作業時間を本当に短縮できることが条件になる。空いた時間があっても注文がなければ、限界利益は増えないんだね。
センパイその通り。比較の分母を選ぶときには、実際に足りない資源が何かを確かめよう。人の総時間に余裕があっても、特定設備や検品担当だけが詰まっていることもある。平均の処理時間だけで余力を決めず、工程別に記録する。数式を増やす前に、現場の制約を見つけることが計算の役に立つんだ。
固定費を下げる案と、変動費を下げる案

センパイ基準の条件ならその通りだ。固定費を二十八万円にすれば、限界利益四十万円から引いて利益十二万円になる。変動費を五千八百円に下げれば、一個あたり限界利益四千二百円、百個で四十二万円となり、固定費三十万円を引いて十二万円だ。ただし削減にかかる初期費用は別に確認する。
ユイ販売数八十個で比較すると、固定費削減案の利益は三十二万円引く二十八万円で四万円。変動費削減案は三十三万六千円引く三十万円で三万六千円。百二十個なら前者二十万円、後者二十万四千円になるね。販売量が変わると、同じ二万円改善に見えた案の効き方が違ってくるんだ。
センパイさらに、品質低下、再作業、解約違約金、乗り換えの手間がないかを確認しよう。必要な工程まで削って、返品や不良が増えれば別の費用が発生する。削減できる金額を楽観的に決めず、見積書や小規模な試行で裏付ける。価格維持、価格変更、業務改善の案を同じ前提で比べると、議論しやすいよ。
安全余裕を、保証の数字にしない
ジム基準の売上百万円に対して分岐点七十五万円だから、差は二十五万円だね。これを売上百万円で割った二五%は、どのくらい売上が落ちても境目まで余裕があるかを見る数字として使えそうだ。でも将来も二五%なら安心、とは言えないよね。

ユイ日本政策金融公庫の財務指標の説明には、損益分岐点売上高が実際の売上高の何%かを見る損益分岐点比率があるね。基準なら七十五万円を百万円で割って七五%。私たちの安全余裕率二五%と足すと一〇〇%になる。同じ言葉だと思って逆の率を報告しないよう、式も添えておくよ。
センパイよい確認だ。どちらの率にも、あらゆる業種に通用する安全の保証はない。月々の変動、季節性、大口取引への依存、費用契約の変更なども見よう。数字を一つ決めて安心するより、悪化したときに何を確認するかを決める方が実務で使いやすい。基準と注意条件を合わせて記録しておこう。
黒字になっても、口座残高とは別の確認が必要
ジム損益分岐点を超えれば、会社のお金も足りると思ってしまいそうだね。でも以前学んだように、売上の入金日と仕入れの支払日は同じとは限らない。今回の利益十万円が、そのまま月末の口座残高の増加になるわけではないんだよね。

ユイ営業上の利益十万円が出る計画でも、販売先の入金が翌月で、仕入れの支払いが今月なら今月の現金は足りないかもしれない。だから値下げで数量を増やす案では、仕入れ資金や在庫も増えるかを確認するね。損益分岐点だけで追加の借入額や返済できる額を決めないようにするよ。
センパイ採算が合うことと、支払日にお金があることは、それぞれ確認する。この二つを同じ一つの数字で済ませないことが大切だ。税金や借入条件を含む個別判断は、実際の資料をそろえて税理士や金融機関などへ確認する。この記事では、借入や特定の金融商品を勧めることはしないよ。

原価が上がったとき、何を集めて話し合う?
ジム仕入れ値が変わったら、価格や販売量も見直す必要があるね。以前の変動費六千円を使い続けていたら、黒字のつもりで赤字になるかもしれない。取引先へ価格の相談をするときにも、値上がりしたという感想だけでは説明しづらそうだ。
センパイまず対象商品、従来と現在の原価、変わった時期、数量、契約条件をそろえよう。日本政策金融公庫の創業支援資料にも、追加費用をまかなうための売上高を考える例がある。会社の原価構造と、費用をまかなえる販売条件を整理しておこう。ただし、採算の計算だけで交渉が必ず成立するわけではない。自社の証拠と相手に伝える条件を整理することが出発点だ。

センパイその条件の置き方なら適切だ。価格維持で効率化する案、価格を変える案、内容や受注条件を調整する案を並べ、それぞれの顧客への影響も考えよう。取引条件や法令への対応が必要なら、該当する公式資料や専門窓口へ確認する。今回は交渉の法的な可否や、特定契約の判断まで決めないことにしよう。
現場で使う確認表は、どの順に作る?
ジム考え方はわかったけれど、明日会社で使うときに何から始めればいいかな。決算書だけで全部わかると思っていたけれど、販売記録や手数料の契約も必要なんだね。担当者が同じ手順で更新できるように、作業の順番を決めておきたいな。
センパイ最初に対象月と商品範囲を決め、売上明細、仕入れ、販売手数料、固定契約などを集めよう。次に費用を分け、売上と費用の合計を帳簿と突き合わせる。分類変更や除外があれば理由を残す。そのうえで限界利益、率、分岐点、目標利益に必要な売上と数量を計算するんだ。
ユイ計算後は価格、数量、一個あたり費用、固定費のどれかを変えた比較表を作るね。全部を同時に変える前に、一つずつ動かして原因を確かめたい。最後に供給能力と入出金予定を見て、実行する案、実行しない案、追加で確かめる案を分ける。担当者と見直す日付も書けば、表だけで終わらずに済むね。
センパイそうだね。表を更新するたびに過去の見積もりを消さず、見込みと実績の差を残そう。数量が違ったのか、変動費が上がったのか、予定外の固定費があったのかを追える。差額の理由がわからないときは不明と書き、次に必要な資料を決める。毎回都合よく前提を変えないことが、計画の改善につながるよ。
- 対象月・商品・利益の範囲を決める
- 明細と契約から費用を分類する
- 合計を帳簿と突き合わせる
- 限界利益と分岐点・目標数量を検算する
- 価格・数量・追加費用の案を比較する
- 供給能力と入出金予定を別に確認する
不明な費用、推定した分類、比較の前提、担当者、見直す日付を残します。実行後は見込みと実績の差を確認。

三つの案を比べて、確かめることを決めよう
ジム私なら、まず基準の価格維持案、九千円へ下げる案、一万一千円へ上げる案を同じ表に置くよ。価格維持で百個なら利益十万円、値下げして百二十個なら六万円、値上げして九十個なら十五万円。この数量は仮定なので、最大の利益の行だけを選んで実行はしないようにするね。
ユイ価格維持案は需要を変える効果がまだ不明で、費用上昇には対応が必要。値下げ案は購入しやすくなる可能性がある一方、必要販売数が増えて対応費用も出やすい。値上げ案は一個の限界利益を増やせる一方、販売数や継続購入への影響がある。三つとも仮説と検証する項目を並べて比べるよ。

ジム今日から売上の報告に、限界利益の合計と追加費用も添えるよ。分岐点を超えたか、目標利益へ届いたか、支払日に資金が足りるかを別々に確認する。そして価格の変更は、販売数と費用の条件をそろえて比較してから考える。根拠のある資料と検算を残して、次の会議で話し合える形にするね。